今や日本だけでなく、世界中の子どもから大人まで幅広い世代に愛されている日本のアニメ。そんなアニメ愛を表現するためにアニメキャラクターやロゴなどをプリントしたオリジナルTシャツを作りたいと考える人も増えていますが、それには注意が必要です。
というのも、他人が作成したキャラクターやロゴには著作権や商標権があるため、使用する際には権利保有者からの許可が必要。もし無断で使用すると著作権や商標権の侵害となり、損害賠償や使用差し止めを求められるだけでなく、場合によっては刑事罰の対象となるリスクがあるのです。
そこで今回は、アニメなどのキャラクターやロゴデザインを使用したオリジナルTシャツを作る際に知っておきたい著作権や商標権の基礎知識、著作権・商標権の侵害になってしまう事例を解説します。大好きなアニメのオリジナルTシャツで残念な思いをしないために、著作権と商標権について一緒に学びましょう。
著作権とは
著作権とは、アートや音楽、小説、デザイン、ブランドロゴなど、創造的な活動から生まれた作品を創作した「著作者」に与えられる法的な権利のことで、著作者の利益を保護し、文化の発展を後押しするための法律です。著作者の許可があれば複製したりすることは可能ですが、許可なくその著作物をコピーしたり、販売したりすることは法律で禁止されています。
著作権法で定められる権利
著作権の内容は「人格的な権利」と「財産的な権利」の2つに分けて定められています。
著作者人格権
著作物が勝手に公表・改変されないよう保護する権利
著作権(財産権)
著作物による財産的な利益を保護する権利
なお、著作権は特別な手続きや登録をしなくても捜索した時点で自動的に著作者に与えられる権利となりますが、著作権には時効があり、その著作者が個人の場合には、死後70年が過ぎると自由に使えるようになります[1]。
著作権を侵害するとどうなるの?
著作権に関するルールは「著作権法」という法律で定められています。そのため、権利者の許可なしで無断使用すると著作権侵害となり、民事上の責任を追及されるだけでなく、刑事罰が科される可能性もあります。
民事上の責任
侵害行為の差止請求や損害賠償の請求を追及されることがある。
刑事上の罰則
- 著作権の侵害:10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金
- 著作者人格権の侵害など:5年以下の懲役又は500万円以下の罰金
- 法人による著作権の侵害:3億円以下の罰金
※懲役刑と罰金刑は併科されることもある
商標権とは
商標とは、事業者が製品やサービスに使用するマークやロゴ、識別できる標識のことを指し、消費者がそのブランドと他のブランドを区別できるようにする役割を果たします。そして、このマークを特許庁に登録することで、商標の使用に関する権利である商標権が発生します。この商標権により、同一または類似の商標を他者が無断で使用することが禁止され、ブランドの保護と企業の信用保持につながります。
商標権を侵害するとどうなるの?
商標権に関するルールは「商標法」という法律で定められています。著作権法と同じく、権利者の許可なしで無断使用すると商標権侵害となり、民事上の責任を追及されるだけでなく、刑事罰が科される可能性もあります。
商標権の侵害に対する罰則は、主に以下の2つの側面から構成されています。
民事上の責任
著作権と同様に、著作権者や商標権者から差止請求や損害賠償請求を追及されることがあります。
刑事上の罰則
10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金
※懲役刑と罰金刑は併科されることもある
著作権と商標権を侵害しないためには
このように、自分以外の人が創ったものを無断で使用できないことはお分かりいただけたと思いますが、どちらも個人で楽しむ目的であれば、著作権や商標権の許可を得る必要はありません。というのも、著作権法第30条「私的使用目的のための複製」では、個人的に又は家庭内の限られた範囲内において使用する場合は複製が認められており、商標権は商業的に使用されることを前提としているため、営利目的や第三者に見せる目的がなければ商標権侵害にあたらないとされています。
ただし、それを公開したり、他者に配布したりすると、著作権侵害や商標権侵害になるリスクが生じます。また、商標権は誤解を与える形での使用を禁止しているため、個人的な楽しみの範囲を超えないようにしましょう。
アニメTシャツに関するケーススタディ
上記の通り、アニメTシャツを作る場合には、著作権や商標権の問題があるため注意する必要があります。?ここでは、具体的なケーススタディを紹介します。
ケース1: アニメキャラクターを使用
人気アニメのキャラクターをTシャツにプリントした場合、自宅で個人的に使用する目的であれば著作権侵害にはなりませんが、友達に配布したり、販売したりすると著作権侵害となります。
ケース2: アニメのロゴをTシャツに使用
たとえば「ドラゴンボール」などのアニメタイトルやアニメキャラクターのロゴをTシャツにプリントした場合、自宅で個人的に使用する目的であれば問題ありませんが、第三者に配布したり、販売したりする場合には、商標権を侵害していると見なされます。
ケース3: 古いアニメキャラクターを使用
昔のアニメのキャラクターをTシャツにプリントした場合、著作権が消滅しているため著作権侵害にはなりません。著作者の死後70年もしくは公表後70年を経過していれば、誰でも自由に使用することができます[1]。ただし、ミッキーマウスのように年代によってデザインが異なる場合には、著作権の侵害に該当する場合もあります。
ケース4: アニメキャラクターやロゴで二次創作
アニメキャラクターやロゴを自分で模写したものやパロディ表現したものは、自宅で個人的に使用する目的であれば問題ありませんが、第三者に配布したり、販売したりする場合には、著作権や商標権の侵害と見なされます。
ケース5: 歌詞や小説の一説を使用したデザイン
歌詞や小説の内容は著作権で保護されているため、無断で使用すると著作権侵害になることが多いです。
このように、著作権や商標権がある作品やデザインは、個人的な楽しみのために使用する限りは権利者の許可を取る必要はありませんが、営利目的や公の場での利用を目的とする場合は必ず許可が必要となります。観光地などではパロディTシャツが販売されていたりしますが、実は違法だった…なんて場合もありますので、それを真似して似たようなオリジナルTシャツを作るようなことはお控えください。
また、個人的にアニメTシャツを作った場合でも、SNSにそのTシャツの写真をアップロードすることで著作権侵害にあたりますので、SNSにアップロードしたいと思うのならば、必ず著作者や商標権所有者から許可を得るようにしましょう。
脚注
- 著作物等の保護期間の延長に関するQ&A | 文化庁, 2024-11-11, https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/kantaiheiyo_chosakuken/1411890.html
参考
- 著作者にはどんな権利がある? | 公益社団法人著作権情報センター CRIC, 2024-11-11, https://www.cric.or.jp/qa/hajime/hajime2.html
- 知的財産権について | 経済産業省 特許庁, 2024-11-11, https://www.jpo.go.jp/system/patent/gaiyo/seidogaiyo/chizai02.html
- 商標権侵害への救済手続 | 経済産業省 特許庁, 2024-11-11, https://www.jpo.go.jp/support/ipr/trademark-kyusai.html
- 著作権法第30条 - Wikibooks, 2024-11-11, https://ja.wikibooks.org/wiki/著作権法第30条