突然ですが、「カリグラフィー」という言葉を聞いたことはありますか?カリグラフィーとは西洋の書道のようなもので、その歴史はとても古いのですが、実は現在のデザインの中にも用いられており、皆さんも一度は目にしたことがあるのではないかと思います。
今回はそんなカリグラフィーの種類やフリーで使える美しいフォントをご紹介します。
カリグラフィーとは
カリグラフィーとは、 ギリシャ語で「美しい書き物」という意味で、主にラテン文字を美しく描くのに用いられる技法です。「西洋書道」とも呼ばれているように、カリグラフィーには専用のペンとインクが用いられますが、単に文字を美しく書くテクニックの事だけではなく、芸術的に文字を表現する概念そのものを指すこともあります。
19世紀末に興ったアーツ・アンド・クラフツ運動やアール・ヌーヴォーによってカリグラフィーの価値が見直されたという経緯もあり、現在でも文字にデザイン性を持たせるために使われます。流れるような優雅さであったり、中世ヨーロッパを思わせる風格を演出したい時などに活用することが多く、結婚式のウェルカムボードや商品のパッケージデザイン、Tシャツやパーカーのデザインなどによく用いられます。
かの有名なAppleの創業者であるスティーブ・ジョブズは大学時代にカリグラフィーに魅せられ、退学したあともカリグラフィーの授業にコッソリ忍び込んでいたという逸話もあるほどで、Apple社のMacに美しいフォントが多く搭載されたのはそのためだと言われています。
主な書体の種類
カリグラフィーの歴史は古く、その始まりは1世紀後半の古代ローマにおける碑文と言われています。その後、時代が進むにつれ数々の書体が生まれたのですが、今回は現在でも目にする機会が多い代表的な書体を4つご紹介します。
イタリック体
ルネッサンス期のイタリアを中心に普及した書体で、文字に傾斜をつけるなどして早く書けるようにしたものが起源。線の美しさと読みやすさが特徴で、現在でも最もよく目にする書体です。
イタリック体の文字が右に傾いているのは「速記できる手書き調の筆記体にしたら結果的に右に傾いた」というのが実情で、「Arial Italic」や「Helvetica Neue Italic」のようなメジャーなフォントのイタリックスタイルとは全くの別物です。これらのフォントのイタリックスタイルは単にサンセリフ体を傾けただけのオブリークであるのに対して、カリグラフィーのイタリック体はあくまで「手書き調スタイル」なのです。「a」が「α」に変化するなど、単に斜体にしているだけではありません。
ゴシック体(ブラックレター)

日本におけるゴシック体は、髭のない均一の太さの線で構成された書体のことを指しますが、西洋におけるゴシック体は中世ヨーロッパで使われた「ブラックレター」のことを指します。当時は紙が非常に高価であったため、スペースを節約できるブラックレターのニーズが高く、広く普及しました。インパクトがとても強いため、現在でも新聞の見出しやロゴデザインに使用されることが多い書体です。
カッパープレート体

イタリック体をさらに速く書けるように改良して生まれたのがカッパープレート体。専用の細いペン先を使い、筆圧を変えることで線の太さに変化をつけているのが特徴です。そもそもカッパープレートとは、18〜19世紀ごろにヨーロッパで流行した銅版印刷(銅板に彫刻を施して印刷する技法)により広まった書体で、エレガントさや繊細さが最大の特徴。見た目のデザイン性も高く、文字だけでもデザインとして成り立つような美しい形状をしており、ウェルカムボードや結婚式の招待状などに使われることが多い書体です。
なお、カッパープレート体の最大の特徴でもある文字の「くるくる」と描かれる飾り線はフローリッシュと言い、主に文章の始まりに用いられる大文字や、文末の文字の装飾に用いられます。特に「H」や「B」、「S」などはフローリッシュが用いられ、華やかさをアップさせる効果があります。
ローマンキャピタル体

紀元前1世紀頃から使われていたクラシカルな書体で、アルファベットのセリフ書体の大文字の原点となる書体。古代遺跡の碑文の多くはローマンキャピタル体で刻まれており、古典的ではある一方、調和の取れた形状が特徴の書体です。
ローマンキャピタル体には小文字がなく大文字だけ書かれるため、施設の名称表記や映画のタイトルなど、高級感のある格調高いデザインに適した書体です。調和の取れた形状の背景には、すべての字体が「円形」「正方形」「三角形」といったシンプルな図形をベースにしていることがあります。カリグラフィーにおいては基礎中の基礎とも言われる重要な書体です。
おすすめのカリグラフィー風フリーフォント7選
カリグラフィーの基礎や魅力を理解したところで、いよいよデザイン制作に活用したいフリーで使えるカリグラフィー風フォント7選を紹介いたします。こちらで紹介するフォントは全てTプラントのデザインツールにも組み込まれているので、Tシャツのデザインにも簡単に使えますよ!
Allura
Alluraは人気の高いカジュアルな筆記体フォント。流れるような美しいデザインでありながら力強さもあり、可読性がとても高く、パッケージやロゴデザインに適しています。
https://fonts.google.com/specimen/Allura
Tangerine
日本人デザイナーの大曲俊氏がデザインしたフォントTangerine。16〜17世紀の多くのイタリック書体からインスピレーションを受けたデザイン性の高いカリグラフィーフォントです。大文字と小文字の高さに差があり、小文字の縦線も長く飛び出すように設計されているので、デザインにメリハリをつけられます。
https://fonts.google.com/specimen/Tangerine
Yesteryear
Yesteryear は平らなペン先で書いたカリグラフィーを模したフォント。1942 年の映画「パームビーチ物語」のタイトル画面をベースにして作られました。レトロな雰囲気を出すにはうってつけのフォントですね。
https://fonts.google.com/specimen/Yesteryear
UnifrakturMaguntia
UnifrakturMaguntia はドイツの書籍で多く使われている1900年代のスタイルのFraktur(フラクタル)に基づいたブラックレターフォント。Peter WiegelがデザインしたBerthold Mainzer Frakturの1901年版書体をベースにしています。
https://fonts.google.com/specimen/UnifrakturMaguntia
Pirata One
Pirata One はディスプレイでうまく機能するように簡素化されたゴシックテクスチャフォント。UnifrakturMaguntiaに比べて装飾が少なく、読みやすさを重視したい場合には適しているでしょう。
https://fonts.google.com/specimen/Pirata+One
Monsieur La Doulaise
Monsieur La Doulaise はエレガントでスタイリッシュなカッパープレート体フォント。結婚式の招待状やウェルカムボードはもちろん、トートバッグのデザインにもオススメです。
https://fonts.google.com/specimen/Monsieur+La+Doulaise
Cinzel
Cinzelは1世紀のローマの碑文からインスピレーションを得て設計されたローマンキャピタル体フォントです。よく似た有名なフォントにAdobeのTrajanがありますが、Trajanが有料なのに対し、こちらは無料で使えます。ローマンキャピタル体につき、基本的に大文字のみとなります。小文字を打つと、大文字をそのまま小さくした字形が表示されます。
https://fonts.google.com/specimen/Cinzel
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