文字とは何か?いつ、どこで誕生したのか?
こんにちは、スタッフbです。
普段、生活の中で何気なく使っている文字ですが、文字はいつの時代にどのようにして誕生したのか、考えたことはありますか?
歴史上最古の文字は、古代メソポタミア時代のシュメール人が作った楔形文字(くさびがたもじ)
と一般的にいわれています。
現在では、楔形文字よりも古い、紀元前5200年頃のディスピリオタブレットと呼ばれる木製のタブレットがギリシャ北部で見つかっており、これが解読できれば文字の歴史が書き換わるといわれているほど興味深い内容ですが、これを解読するために比較となるテキストや他言語がないため、いまだに世界最古の文字は楔形文字とされています。
さて、そんな世界最古の文字である楔形文字は、現在のイラクにあるチグリス川とユーフラテス川に挟まれた地域であるシュメールの古都ウルクで発見された
ウルク古拙文字(象形文字)が発展して、楔形文字になりました。
紀元前4000年代のウルク期に使われていたとされるウルク古拙文字は、「拙(つたない)」の字のごとく、象形文字もしくは記号のようなもので、記録をつけるために物と数を表すために使われていたそうです。
それが時を経て、音を表す文字(表音文字)がうまれ、シュメール人によって紀元前3500年頃から音と意味の両方を表わす楔形文字へと進化を遂げたのです。
そこで今回は、楔形文字はどのような文字なのか、そして楔形文字を生み出したシュメール人とはどのような人たちなのか、そんな楔形文字にちなんだ内容をお届けします。
普段何気なく使っている漢字やひらがななどの文字。古代の人たちが農作物や家畜の数などを記録するための道具として生み出した文字は、情報を蓄積するためのものであり、文字こそ人類史上最も偉大な発明なのかもしれません。
3000年以上にわたって使用された楔形文字の繁栄と衰退
今から5000年以上前、古代メソポタミアでシュメール人によって発明された楔形文字。
シュメール語を表すためにシュメール人が作った文字であるものの、言語が違う、多くの民族が使用したため、
3000年にわたって使われ続けていました。
というのも、シュメール人の都市国家を征服してメソポタミアを統一したアッカド人は、文字を知らなかったために楔形文字を借用。アッカド語を表記するために楔形文字の改良を重ねたことで、どんな言語でも表記できる文字体系が確立し、さらに、アッカド王国の支配がメソポタミア全域に及んだことにより、
西アジア地域の公用文字となったのです。
その後、王朝の交代によりバビロニアやエラム、ヒッタイトやアッシリアなどの国々によって紀元前1000年頃まで長期間にわたって広く使われていましたが、古代メソポタミア地域での政治的・文化的な変化が生じ、新しい支配者や文化が台頭したことにより、
ヘレニズム時代の到来に伴い、楔形文字は衰退。
なお、楔形文字に代わって使われるようになったのはアッシリア帝国(紀元前671年にメソポタミアと古代エジプトを含むオリエントを統一)のアラム語のアラム文字。
子音を表す22文字で成り立つため、文字体系は広範囲で流用できるとされ、その後はヘブライ文字とアラビア文字の原型となり、さらにはウイグルやモンゴルなどの文字の母体となったとされています。
すべての文字の起源?!楔形文字の特徴
さて、西アジア地域の公用文字となっていた楔形文字は、大きな特徴が3つあります。
絵文字のようなものから始まり、次第に簡略化されていった
下記の図をご覧いただければお分かりになるかと思いますが、楔形文字は3000年もの長期間にわたって使用されていたため、だんだんと簡略化されていきました。
紀元前2500年(青銅器時代初頭)は約1,000文字ありましたが、その後、ヒッタイト語の楔形文字では375文字、アッカド語の楔形文字では約200文字で構成されるようになりました。
表意文字と音も表す文字を併用
楔形文字の中には、象形文字として知られるような特定の単語や概念を表す記号(表意文字)のほかに、アルファベットやひらがななどの音だけを表す「発音文字」や漢字などの音や意味を表す文字「表示文字」、母音と子音を表す「音節文字」を併用しています。
これは、文字の歴史でとても重要なこととなり、定かではありませんが、多くの文字体型と記述法は楔形文字から派生したものなのかもしれません。
楔形文字は粘土板に刻んだ
楔形文字は粘土で作られた版が乾く前に、葦などで作ったペンで文字を刻んでいました。
メソポタミア地域は乾燥した気候だったために、粘土が容易に入手でき、さらには加工しやすかったたという理由があげられます。長期間保存が必要な文書や記録は焼き固め、保存が不要なものは再利用されていました。
なお、楔形文字の代わりに反映したアラム文字は、粘土板に代わる媒体としてパピルスや羊皮紙を使用していたとされています。
楔形文字を発明したシュメール人とは
ここまでは楔形文字についてご紹介してきましたが、世界最古の文字を作ったシュメール人とは楔形文字の他にどのような文化を築いたのでしょうか。
メソポタミア文明の始まりとなる世界最古の都市国家をチグリス川とユーフラテス川の流域に築いたシュメール人。ただ、シュメール人は謎が多く、民族系統は不明で、いつの時代にどこから来て、どこへ消えたのか解明されていないのです。
さらに、アッカドやバビロニアに支配された後、バビロニアがペルシャ帝国に併合された時には歴史から姿を消しているために、
もしかしたら宇宙人なのではないのか?
といった逸話もあるほど、謎に包まれているのです。
というのも、シュメール人は楔形文字を発明しただけではなく、建築や文学、天文学や医学などの高度な知識を持っていたとされているのです。
シュメール人が築いた都市国家は、円形の城壁で都市を囲み、中心に神殿を、周辺に農村を配しています。また、ジッグラトと呼ばれる煉瓦を用い数階層に組み上げて建てられた巨大な聖塔を建設し、旧約聖書の『ノアの箱舟』の原型ともいわれる人類最古の物語「ギルガメッシュ叙事詩」を作成し、さらには医学書と思われるような粘土板も見つかっているのです。
ギルガメシュ叙事詩が記された粘土板の断片
そんな高度な技術を持っていたシュメール人ですが、シュメール人がいたからこそ今日の文字の文化が成り立っているといえるのではないでしょうか。
情報の記録を確立するために生み出された楔形文字。
今回は楔形文字とシュメール人についてお伝えしましたが、文字はデザインにおける重要な要素の一つであり、文字の形そのものがデザインであるとも言えます。文字の歴史について知識を深め、デザイン作成のためのフォント選びの豆知識として活用してはいかがでしょうか。
最後になりましたが、楔形文字はUnicodeに含まれており、テキストデータとして扱うことが可能です。
楔形文字を変換してくれる便利なツールもあるので、楔形文字をデザインに使ってみたい!という人はぜひ試してみてください。
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JPNLAB 古代ペルシャ楔形文字
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ひらかな・カタカナを古代ペルシャ楔形文字に変換
古代文字であるがゆえに、何が書いてあるのか読めない!と突っ込みたくなりますが、かっこいいデザインに仕上がること間違いなしです。
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