ペットボトルのキャップをボールに見立て行うキャップ野球。 キャップ投げとも呼ばれるキャップ野球の競技人口は年々増え、今や日本のみならず台湾でも人気が広がっています。野球であれば人数もグラウンドも必要となりますが、キャップ野球は5人vs5人で試合が行われ、なおかつ屋内で行えるため天候に左右されることなく楽しめます。そして、その最大の魅力はなんといっても、マンガ顔負けの魔球!
「なんであんな変則的な変化をするの?」、「浮き上がるなんて重力に逆らってるじゃん!」
このように、ピッチャーから投じられるペットボトルキャップは、野球のボールの軌道と比べると明らかに変化が大きく、多くの人がこれまで見たことのない軌道を描くことができるため、自分でも投げてみたいと思いますし、打ってみたいという気持ちに駆られます。
そこで今回は、投げた物体の軌道が変化する原理「ベルヌーイの定理とマグナス効果」についてお伝えします。ピッチャーから投じられるキャップは、野球やサッカー、テニスなどのボールが曲がる理由と同じく、流体力学で説明できるのです。
投げた物体の軌道が変化する原理
投げ方や回転の加え方次第で、野球ボールよりも大きな変化を出せるのが面白いキャップ野球。軽くて球体ではないペットボトルキャップは、ピッチャーから投じられた回転によって以下のような物理現象が絡み合い、カーブやシュートなどの変化球となります。
- キャップの周りの空気の流速が非対称となる
- さまざまな回転によって進行方向を変える力が生まれる
- キャップの進行方向に対して背後の空気も乱流が生じる
このように、投げたキャップはいくつかの物理現象が絡み合あって大きな変化を見せるのですが、実はキャップに限らず、空中を動く全ての物体の軌道には、「ベルヌーイの定理」と「マグナス効果」という物理の法則が深く関わっています。ここでは、この二つの物理の法則について解説します。
ベルヌーイの定理
ベルヌーイの定理を簡単に説明すると、「速度が大きいほど圧力が低くなり、速度が小さいほど圧力が高くなる」という物理法則になります。
上図は飛行機の翼の周りの空気の流れを表した図です。
飛んでいる飛行機の翼の上側と下側では、空気が流れる速度に差が生じます。速度が速い翼の上側の圧力は下がり、速度の遅い翼の下側の圧力は上がります。その結果、揚力(運動方向に対して垂直で上向の力)が発生して飛行機は浮くことができるのです。
マグナス効果
空中を回転しながら進む物体の周囲にも、ベルヌーイの定理と同じ原理によって圧力差が生じます。
上図は投げた野球ボールの周りの空気の流れを表した図です。
ボールを中心に見た場合、空気はボールの進行方向と逆向きに流れます。この時、ボール進行方向と回転の向きが同じ側では空気の流れが遅くなり、反対側では空気の流れが速くなります。その結果、圧力差が生じ、ボールを圧力が低い方から圧力が高い方へ引っ張る力(揚力・マグナス力)が生じます。これがマグナス効果です。
例えば、ボールに横回転をかけると横方向に曲がり、カーブやシュートのような横に変化する軌道が生まれます。また、縦回転(バックスピン)をかけると鉛直上向きの揚力が生まれ、ソフトボールにおけるライズボールや野球におけるストレートになります。
知っている人も多いと思いますが、野球のストレートはマグナス効果によって生じた揚力によって落ちずに真っ直ぐ飛ぶ球種で、時には打者の手元でホップすることもあります。これは藤川球児の「火の玉ストレート」として有名ですが、強烈なバックスピンによって生まれた揚力がなせる技なのです。
野球ボールやソフトボール、ゴルフボール、サッカーボールなど、回転しながら飛ぶあらゆるボールにマグナス効果は生じます。同じように、回転しながら飛ぶキャップにもマグナス効果は生じるのです。
キャップ野球の魔球がすごい理由
このようにキャップ野球でのキャップの軌道変化は、マグナス効果とベルヌーイの定理が組み合わさることで生じますが、下記YouTubeの中盤で紹介されるライジングボールは、本当にすごいんです!
バッターが打てないのはもちろんのこと、キャッチングすらできないような、ぐーんと途中で大きく浮き上がる魔球などが存在する理由は、投げた物体に働く力の関係によって説明できます。これには主に揚力、重力、そして空気抵抗が関係しています。
回転をかけて投じられたキャップは、マグナス効果によって揚力を生み出します。また、キャップの表と裏ではベルヌーイの定理によって圧力差が生まれます。
横方向の揚力が強ければキャップは曲がり、鉛直上向きの揚力が強ければキャップは浮き上がります。
もちろん、キャップにも重力が働きますが、野球ボールに比べて極端に軽いため、揚力が重力を上回って実際に高く浮き上がることができるのです。
最終的には空気抵抗によって減速し、キャップは落下しますが、打者の手元に届くまで速度を保っていれば、強力に浮き上がるキャップを投げることができるでしょう。つまり、大きく浮き上がる魔球の条件は次の4つになります。
- 初速が速い
- 空気抵抗の影響を受けにくいキャップの向きと形状
- 鉛直上向きの強い揚力
- とにかく軽い
キャップ野球における魔球の投げ方
ここでは、キャップ野球におけるキャップの投げ方について、基本的なキャップの持ち方と投げ方、ストレートと変化球(カーブとライズ)の投げ方を紹介します。
基本的なキャップの持ち方と投げ方
基本的な持ち方は、投げる手の親指と中指の第一関節付近でキャップをしっかりと掴むことです。キャップの曲面の部分を利用して、持ちやすい角度でしっかりとホールドしましょう。
そして、キャップを投げる際には、前に押し出すようにして、キャップを中指で弾き飛ばし回転をかけます。
どのフォームでもこの投げ方が基本となり、手首を固定して、腕をまっすぐに伸ばすことにより、より正確に狙った位置に投げられるとされています。
ストレート
キャップ野球では意外と難しいストレートは、キャップの表面をオモテにして、手を水平にして中指で弾き飛ばします。親指とキャップ、中指が一直線になるようにして、水平にして投げることがポイントとなり、腕が地面と平行になるように腕を振るサイドスローや腕が水平より下の角度になるように腕を振るアンダースローから投げることで、まっすぐに飛んでいきます。
変化球:カーブ
投げた手と逆方向に曲がりながら沈むカーブは、キャップの表面をウラにして、手を親指側に30°程傾けて、中指でキャップを弾くようにして振って投げます。右手で投げると左下へ、左手で投げると右下へ曲がります。
変化球:ライジング
バッターの手前でふわっと浮き上がるライジングは、キャップの表面をオモテにして、手を水平にします。そして、キャップの裏側に空気を押し当てるように叩きつけるように弾き出します。地面に対して垂直に押し当てるほど上方向へ大きく変化します。
この他にも、キャップ野球にはさまざまな変化球があり、キャップの持ち方や指の使い方ひとつで軌道の変化を楽しむことができます。キャップの凹凸の特性を活かしながら新しい変化球を生み出す楽しさも、キャップ野球ならではの醍醐味といえるでしょう。
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