日常生活に欠かせないペットボトル。その生産量は世界中で増加し続け、その処理問題は世界的な課題となっています。中でも、問題視されているのが、ペットボトルによる海洋汚染。海に流れ込むプラスチックごみは、生態系に悪影響を与え、最終的には人間にも影響を及ぼす可能性があります。
こうした問題を解決するために、ペットボトルをリサイクルして新しいTシャツを作るという取り組みが注目されています。そこで今回は、ペットボトルをはじめとするプラスチックごみを利用した新素材「再生ポリエステル(リサイクルポリエステル)」についてご紹介していきます。
プラスチックごみを再生させ、新たな衣料の原材料として再生させる。そんな地球環境にやさしい取り組みが既に「実現できている」ということを知り、個人でも普段の暮らしのなかでできる環境保全について考えてみましょう。
海洋プラスチックごみ問題
ペットボトルやビニール袋、食品容器などのプラスチックごみは、毎年800万トン以上が海に流れ込んでいると推定されています。このまま増加し続けると、2050年には「海中のプラスチックごみが魚の量を上回る」とも言われており、これは全世界が解決すべき深刻な環境問題です。
こうしたプラスチックごみは、太陽光や波の影響で小さく砕かれ、目に見えないほど細かい粒子になります。しかし、自然には分解されないため、海の中をずっと漂い続けます。海に浮かぶプラスチックごみは、海の生き物や海鳥に害を与え、誤って飲み込まれる原因にもなります。また、このプラスチックが食物連鎖に取り込まれることで、最終的に私たち人間にも悪影響を及ぼす可能性があるのです。
再生ポリエステルTシャツができるまで
こうした海洋プラスチック問題を解決するための取り組みとして、世界中でペットボトルのリサイクルが進んでおり、日本ではリサイクル率が88.5%と高水準です[1]。リサイクル方法には、「ペットボトルから新しいペットボトルを作る」(水平リサイクル)と、「ペットボトルから他の製品を作る」(カスケードリサイクル)の2つがあります。カスケードリサイクルでは、再生プラスチックが衣類やカーテン、プラスチック製品などに再利用され、幅広く活用されています。
なかでも、繊維へのリサイクル技術は近年実用化され、「再生ポリエステル」として活用されています。ポリエステルはもともと、テレフタル酸やエチレングリコールといった原料を小さなペレット状にし、それを熱して溶かし、細いノズルから押し出して繊維にします。この方法は、再生ポリエステルの製造でもほぼ同じ工程で行われています。
再生ポリエステルTシャツの製造工程
再生ポリエステルTシャツの製造工程は以下の通りとなります。
1.使用済みペットボトルの回収
回収されたペットボトルはリサイクル施設に運ばれます。
2.ペットボトルの粉砕・洗浄
ボトルのキャップやラベルを取り外し、残ったボトル部分を細かく砕き、徹底的に洗浄します。これで、異物や汚れが除去されます。
3.PETフレーク
細かく砕かれたボトル片が「PETフレーク」となります。
4.ペレットに成形
PETフレークを加熱・溶解し、小さな粒状の「ペレット」に成形します。
5.再生糸の製造
ペレットを再度溶かして極細の繊維状に加工し、「再生ポリエステル糸」を製造します。
6.生地を織り、縫製してTシャツの完成
再生ポリエステル糸を使って生地を編み、それを縫製してTシャツが完成します。
再生ポリエステルのメリット・デメリット
この流れで作られた再生ポリエステル素材は、サステナブルな選択肢として注目されています。環境への負荷を減らす意図で作られた再生ポリエステルは、エコな素材としての大きなメリットがあるもののいくつかのデメリットもあります。ここでは、再生ポリエステルのメリット・デメリットを整理してみましょう。
再生ポリエステルのメリット
- 速乾性が高く、乾きやすい
- 洗濯しても色落ちや型崩れが少ない
- 軽くて、耐久性に優れている
再生ポリエステルのデメリット
- 静電気が発生しやすい
- 毛玉ができやすい
このように、再生ポリエステルもバージンポリエステルも、速乾性や耐久性といった基本的な機能性にほとんど違いがありません。どちらの素材も優れた速乾性を持ち、汗をすばやく吸収して乾かすため、スポーツやアウトドアシーンに最適です。また、洗濯や着用を繰り返しても型崩れしにくく、丈夫で長持ちする特徴を備えています。このように、再生ポリエステルはサステナビリティを考慮しながらも、機能性を損なわない優れた素材といえるでしょう。
広まりつつあるサステナブルTシャツ
環境への配慮を重視したファッションが注目を集める中、ペットボトルから作られる再生ポリエステルをはじめ、オーガニックコットンなどのリサイクル素材で作られたサステナブルTシャツや、CO2排出ゼロの方法で印刷を施したサステナブルなプリントTシャツが広まりつつあります。このような取り組みは、パタゴニアやナイキなどの大手企業も積極的に取り組み、業界全体に良い影響を与えています。
パタゴニアの取り組み
アメリカの登山・アウトドア用品の大手ブランドである「パタゴニア(Patagonia)」は、早い段階から再生ポリエステルによる石油依存の削減に取り組んでおり、アパレルメーカーによる再生ポリエステル製品のプロダクトの第一人者と言っても過言ではないでしょう[2]。また、修理サービスやパタゴニア製品の買取と販売などを行うプログラム「Worn Wear」を展開し、使い捨て文化を減らすことを目指し、リサイクルと再利用を促進しています。
ナイキの取り組み
スポーツブランドのナイキも、サステナビリティに関する取り組みを積極的に進めています。地球環境を守るための取り組み「Move to Zero」では、二酸化炭素排出ゼロと廃棄物ゼロを目指し、製品の素材や製造工程における環境負荷を削減する努力をし、再生ポリエステルやリサイクルナイロンを使用した製品を展開しています[3] 。
このようなサステナブルなウェアは、当サイトTplantでも再生ポリエステル製品を取り扱っています。
リサイクルポリエステルTシャツ
使用済みPETボトルを原料とした「地球環境に優しいサステナブルなドライTシャツ」と銘打った機能性に優れた1枚。この商品は、ポリエステル素材が持つ唯一のデメリットでもある「皮脂汚れやニオイを吸着しやすい」という問題に対して、抗菌・防臭加工(ポリジン加工)が施されているため、汗をかきやすいスポーツの場面や、夏のアウトドアにもおすすめです。また、5.6オンスという厚みがあり、比較的しっかりとした生地なので、季節を問わず着用いただけます。
今回は、ペットボトルをはじめとするプラスチックごみから作られる再生ポリエステルTシャツについてお伝えしました。持続可能な社会を目指して、私たち一人ひとりができる取り組みの一つとして、再生ポリエステルTシャツを選んでみてはいかがでしょうか。
脚注
- 日米欧のリサイクル状況比較|統計データ|PETボトルリサイクル推進協議会, 2024-11-19, https://www.petbottle-rec.gr.jp/data/comparison.html
- ポリエステル:バージン&リサイクル | パタゴニア, 2024-11-19, https://www.patagonia.jp/our-footprint/polyester.html
- ナイキのサステナビリティへの取り組み, 2024-11-19, https://www.nike.com/jp/sustainability