ナスカの地上絵をAIが新たに発見!その目的も判明?

Staff C / 2024年10月16日

2000年もの長い年月を経て、今も消えることなく残っている南米ペルーのナスカの地上絵。人が作ったとは思えないほどの巨大な地上絵は、宇宙人による落書きだとする説や雨乞いの儀式のために使われたという説など、さまざまな憶測がなされています。

ナスカの地上絵の研究と保護を託された山形大学では、これまで20年にわたり多くの地上絵を発見してきましたが、AI技術を活用した研究により約半年で新たな地上絵を303点発見し、さらにその制作目的に関する内容を発表しました。

そこで今回は、山形大学の研究グループが発見した地上絵と、その制作目的についてお伝えします。

ナスカの地上絵の基礎知識

ナスカの地上絵とは、南米ペルーの首都リマから南へ400km、アンデス山脈と太平洋に挟まれた乾燥した砂漠地帯のナスカ台地に描かれた地上絵の集合体のことを指し、これらの地上絵は古代ナスカ人によって紀元前200年頃から紀元後700年頃にかけて描かれたとされています。

地上絵の線の作り方は意外にシンプルで、表面の赤茶色の砂利を取り除くとその下の白い石灰を多く含む層が顔を出すため、歩数で距離を測り、足で表面の砂利を取り除くことで地上絵の線を作っていたのです。まずは地面に小さな下絵を描き、杭やロープを使って拡大していったと考えられていますが、200 メートル以上の地上絵を描くことは容易ではなく、それ以上の大きさの地上絵はどのようにして描かれたのかは解明されていません。

なお、ナスカの地上絵に関する最古の記録は、スペイン人コンキスタドール、シエサ・デ・レオンよる1553年の著書に登場しました。その当時は地上絵であるとは認識してはいなかったようですが、1927年にペルー人の考古学者 トリビオ・メヒア・シェスペ が丘陵地帯をハイキング中に巨大な図形を発見し、1941年にアメリカ人歴史学者ポール・コソックが飛行機で上空から調査を行ったことで巨大な地上絵であることが確認されたのです。

しかしながら、2000年もの歳月が経過しているにも関わらず、今もなお、消えることなく残っているのはいくつかの理由があります。

  • 年間降水量が20㎜以下
  • 年間を通して温度変化が少ない
  • 土壌の性質によって硬化されている
  • 動物がほとんど生息していないため、動物に荒らされることがない

このような条件が揃っていることにより現代に至っているのですが、気候変動によって洪水が起きてしまったり、さらには人の手によって破壊されたりといった問題があります。

AI活用により大きく前進したナスカ研究

山形大学では、2004年からナスカの地上絵の研究を行っており、2012年には「山形大学ナスカ研究所」を設立しました。この研究チームは、ナスカの地上絵の発見、分類、保護に取り組んでおり、ドローンや人工衛星、AIなどのさまざまな技術を駆使して地上絵を調査しています。

地上絵の分類

ナスカの地上絵は、主に動物や植物、幾何学模様などが描かれており、山形大学の研究によると「歩行ルート」と「地上絵」という二つの異なる機能を持つ要素に分けられます。歩行ルートは神殿などの神聖な場所へ向かう巡礼路として使われ、直線や幾何学的模様がその役割を果たしていた可能性があり、地上絵は、神々や自然の力への信仰を表現した絵であり、雨乞いや収穫を祈るための宗教的儀式に関連していた可能性があるでしょう。

地上絵は「幾何学的地上絵」と「具象的地上絵」の二つに分け、それぞれのタイプはサブタイプに分けることができます。


幾何学的地上絵(Geometric)

直線や幾何学的形状が多く、規模も非常に大きいものが特徴です。
幾何学的地上絵には下記の2タイプが存在します。

線状:直線やUの形の線、ジグザグの線など
面状:台形や三角形、長方形など

具象的地上絵(Figurative)

人間や動物、自然のモチーフが中心で、非常に精巧な形状が特徴です。
具象的地上絵には下記の2タイプが存在します。

線タイプ:平均の長さが90メートルと大型で、多くは野生動物を描いたもの
面タイプ:平均の長さが9メートルと小型で、人型や家畜(リャマ)を描いたもの

AI活用の成果

これまで430点の具象的地上絵が見つかっていましたが、今回の調査では、わずか6ヶ月の現地調査で303の新たな面タイプの具象的地上絵を発見できました。さらに、42点の新しい幾何学的地上絵も発見できたそうです。これだけ多くの地上絵を短期間に発見できたのは、AIの導入が関係しています。

AIは2018年の調査でも導入されましたが、新たに開発されたAIは少量のトレーニングデータでも(見つけるのが非常に困難な)小型の面タイプの地上絵を検出できるように進化していました。ナスカ台地の航空写真をAIで分析して、地上絵がありそうな候補地を絞り込んで現地に入って調査を行ったところ、新たな地上絵を発見することができたのです。

新たに発見された303点をすでに知られている具象的地上絵と統合した結果、50点の大型の線タイプ地上絵と683点の小型の面タイプ地上絵では、描かれているものに大きな違いがあることがわかりました。大型の線タイプ地上絵では野生動物に関連するモチーフが圧倒的に多く描かれており、一方で小型の面タイプ地上絵では人間や人間が手を加えたモチーフ(人型33.8%、斬首された頭部32.9%、家畜化されたラクダ科動物14.9%)が描かれていました。

地上絵の目的

今回の発見に基づき、幾何学的地上絵ネットワークとの関連やデザインモチーフの分布の違いを分析することで、線タイプと面タイプの具象的地上絵の目的の違いが確認できたそうです。

線タイプの具象的地上絵は、複雑な直線や台形の幾何学的地上絵ネットワークに沿って配置されています。これは、線タイプの具象的地上絵が幾何学的地上絵ネットワークの一部であることを示しています。このネットワークは神殿や神聖な場所とつながっていることが分かっています。つまり、線タイプの具象的地上絵は主に聖地巡礼のために作られたものとなり、巡礼の始まりや終わりに線タイプの具象的地上絵で儀式が行われたと考えられます。

一方、面タイプの具象的地上絵は、ナスカ台地を縦横に走る古代のトレイル(曲がりくねった小道)から見える距離に位置しています。これらのトレイルは、計画的に作られた直線や台形のネットワークとは違い、明確な始まりや終わりがないことから、個人または小集団に利用された道の痕跡だと考えられています。よって、面タイプの具象的地上絵はトレイルを歩きながら見る「掲示板」のようなもので、小集団の活動に関する情報を共有する目的で作られたと考えられます。

具象的地上絵の例

新たに発見された地上絵を加えると、ナスカではこれまで700個を超える具象的地上絵が発見されています。その中からいくつかの例をご紹介しましょう。

線タイプ地上絵の例

ハチドリの地上絵

ハチドリの地上絵

ナスカの地上絵の中でも特に有名なのがこの「ハチドリの地上絵」ではないでしょうか。全長は約 93メートル、幅は約 40メートルのハチドリは、ナスカの文化において豊かさを象徴する神の使者とされていたと考えられています。

サルの地上絵

グルグル巻きのしっぽが特徴的なサルの全長は約 55メートル。ナスカにはサルは生息していないため、熱帯雨林から連れてこられて神聖なるとして崇められていたのでしょうか。

面タイプ地上絵の例

ゆるキャラ風の人型地上絵

こちらは2022年に山形大学の研究グループが公開した地上絵。精巧に描かれた「ハチドリの地上絵」とは対照的なゆるくて可愛いデザインですね。

四足歩行の動物の地上絵

こちらも2022年に公開された地上絵です。四足歩行の動物であることは確かですが、赤塚不二夫の漫画「天才バカボン」の「ウナギイヌ」のようにも見えます。

子供の落書きみたいな人型地上絵

今回新たに発見された地上絵です。人を描いた地上絵とされていますが、まるで幼児が描いた頭足人間のようですねw

ナイフを持ったシャチの地上絵

こちらも新たに発見された地上絵です。ナイフを持ったシャチとのことですが、どなたかほかの見解を発表していただきたいものです。いったい、どんな意図があるのでしょうか…。

斬首された首の地上絵

これは間違いなく、斬首された首ですね…?
驚きを表現したデザインだと思いますが、癒しを与えてくれる気がするようなしないような。

宇宙人の地上絵

宇宙人なのか、ロボットなのか、何なのでしょうか。
古代ナスカ人のデザインは謎に満ちています。


いかがでしたか。

古代ナスカには文字がなかったために地上絵が情報を伝える役割を果たしていたと考えられていますが、地上絵の中に組み込まれた意味や情報の解析を進めていくとのことで、文字のない世界における古代人の考えを解読できる日はそう遠くないかもしれません。

これまでの山形大学ナスカ研究所の研究により、未解明だったナスカの地上絵について色々なことが少しずつ解明されてきています。今回AIが抽出した候補地の残りを調べることで、今後500点近くの地上絵が見つかると見込まれており、さらなる発見に期待が高まります。

参考


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マニアックなイベントでオリジナルTシャツを見て回るのが趣味な、なんちゃってアスリート。増え続ける体重と日々戦い、行き先問わず走ることを目的とした旅行系ダイエットランナーでありながらも、最近は筋肉の魅力に目覚めてしまい、減量どころか絶賛増量中。カロリー収支を気にしつつも、大好きな唐揚げだけは止められない!