サルからヒトへ

人類はいつ誕生したのか?ヒトとチンパンジーの進化の分岐点

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さっそくですが、「人類はいつ、どのようにして誕生したのか?」と考えたことはありますか?

人類誕生はおよそ400万年前のアフリカでしょ!?

以前はこのように学んだかと思いますが、今やそれは昔の話。2001年、アフリカ大陸中央部に位置するチャド共和国にて約700万年前の猿人、トゥーマイ猿人(サヘラントロプス・チャデンシス)の化石が発見されたことにより、人類誕生は約700万年前とアップデートされているんです。

歴史が変わった?!と驚いてしまう人も少なくありませんが、あくまでも新しい発見や研究成果によって新たなことが反映されるわけで、歴史そのものが変わるわけではありません。もちろん、サヘラントロプス・チャデンシスの発見によって、アウストラロピテクスが最古の人類ではないことが確定されていますが、現状の最古の人類であるサヘラントロプス・チャデンシスもまた、さらなる発見や研究により最古の人類ではなくなる可能性も秘めているのです。

そこで今回は、変わりゆく歴史を考察しつつ、私たち人類はいつ、どのように誕生したのか、ヒトとチンパンジーの進化の分岐点についてお伝えします。

人類はいつ誕生したのか

さて、人類の誕生についてはこれまで定説がありました。その定説とは、最初の人類は約400万年前のアフリカで誕生したアウストラロピテクスだというもので、これまでの歴史の教科書にもこのように記されていました。

しかし、近年の新たな化石の発見よってこの定説が覆され、「人類の誕生は約700万年前」とか「最古の人類はサヘラントロプス・チャデンシス」というように、人類誕生に関する教科書の記述も大幅に変更されたのです。

このように、新たな化石の発見によってこれまで常識が覆されることがあるのですが、人類の誕生という大きな謎の解明の手がかりとなった6つの重要な化石について紹介していきましょう。

化石人類発見の歴史

1924年 アウストラロピテクス・アフリカヌス

通称:アフリカヌス猿人
発見場所:南アフリカ共和国キンバリー近郊
化石の年代:280万年前

石灰岩採石場で発見された頭蓋骨は類人猿のものと似ていたが、同時に人間と似た特徴も見られた。また、直立二足歩行をしていたことを示す重要な特徴も有していた。

1974年 アウストラロピテクス・アファレンシス

通称:アファール猿人
発見場所:エチオピア
化石の年代:318万年前

1974年にエチオピアで発見されたアウストラロピテクス・アファレンシスの化石人骨は、ルーシーの愛称で知られ、全身の約4割がまとめて見つかったことから初期人類の研究を大きく前進させました。その骨格には直立二足歩行を示唆する特徴が見られることから、現代の私たちに繋がっていると考えられています。同属のアウストラロピテクス・アフリカヌスとは同時期に存在したとされています。

1992年 アルディピテクス・ラミダス

通称:ラミダス猿人
発見場所:エチオピア
化石の年代:440万年前

全身骨格として最初に発見されたルーシーより100万年以上前のものと推定される化石。チンパンジーなどと比較すると犬歯が退化していることからヒトの化石だとされています。骨盤の腸骨は類人猿とは異なり股関節を伸ばして直立二足歩行をしていたとされる一方、骨盤の坐骨が長いため股関節を曲げた状態で木に登ることにも適応していたと考えられています。

1997年 アルディピテクス・カダバ

通称:カダバ猿人
発見場所:エチオピア
化石の年代:530万年前〜570万年前

ラミダスよりさらに以前に生きていたとされるアルディピテクス・カダバは、ラミダスの同属異種として考えられています。関節構造から足の指を背屈していたことがわかり、二足歩行をしていたとされています。

2000年 オロリン・トゥゲネンシス

発見場所:ケニア
化石の年代:約600万年前

ケニアに生息していたとされるオロリン・トゥゲネンシスは、腕骨や大腿骨などから、腕渡りはできず、二足歩行していたことでしょう。また、臼歯が大きく犬歯が小さいことから、果物や野菜、肉類も食べていたと考えられています。

2001年 サヘラントロプス・チャデンシス

通称:トゥーマイ猿人
発見場所:チャド
化石の年代:700万年前

サヘラントロプス・チャデンシスは、ヒトがチンパンジーと分岐した頃、もしくはその直前と考えられています。犬歯の退化が見られ、直立二足歩行していた可能性が高いため、最古の人類である可能性が提唱されています。

サヘラントロプス・チャデンシスの頭蓋骨
サヘラントロプス・チャデンシスの頭蓋骨(正面と背面と側面)

サヘラントロプスは本当に最古の人類なのか?

さて、上記で紹介した2001年にアフリカのチャド共和国にて発見されたサヘラントロプス・チャデンシスは、ヒトがチンパンジーとの共通祖先から分岐した約700万年前頃に生存していました。ほぼ完全なかたちの頭蓋骨と下顎の一部、いくつかの歯の化石が発見されています。

発見された化石には下記の特徴が見られます。

  • 脳の容積は約320〜380cc(チンパンジーと同程度)
  • 眼窩上隆起が著しい
  • 大後頭孔が頭蓋骨の下方を向いている
  • 顔の表面は平ら
  • 犬歯はやや小型
  • 歯のエナメル質が厚い

脳の容積や眼窩上隆起は類人猿のものと似ているが、それ以外の特徴は人類らしさを示しています。

サヘラントロプスの顔の復元図
サヘラントロプスの顔の復元図
出典: commons.wikimedia.org

最も注目すべき特徴は大後頭孔の位置です。大後頭孔とは延髄や椎骨動脈が通る孔のことで、この孔が頭蓋骨の下方にあると、直立した時に顔は自然と前を向きます。このことから、サヘラントロプス・チャデンシスは直立二足歩行をしていたと考えられているのです。

また、2022年にネイチャー誌に掲載された論文によれば、サヘラントロプスの化石の発掘現場で出土した大腿骨と尺骨を分析した結果、サヘラントロプスが地上では二足歩行、樹上では二足歩行と四足歩行を併用していたことが分かったそうです。

しかし、これらの化石からは全身像を復元するほどの情報は得られませんし、足跡化石などの二足歩行をしていたことを決定づける証拠もまだ見つかっていません。もし二足歩行をしていなかった場合には、サヘラントロプスは人類ではなく、チンパンジーとヒトの最終共通祖先であった可能性も出てきます。

また、約600万年前にケニアで生息していたとされるオロリン・トゥゲネンシスや530万年前〜570万年前にエチオピアで生息していたとされるアルディピテクス・カダバなどとの関係が分かっていないため、サヘラントロプス・チャデンシスが人類の進化のどこに位置しているのか、未だもって定まっていないのが現状なのです。

参考

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Staff B
Staff B

一度きりの人生を思いのまま生きている、飽くなき探究心が原動力のサブカル系アラフォー女子。流行に左右されず、趣味もファッションも独自路線を進み続けているため同世代の友人は少ないもものの、気の合う仲間とハイボールで乾杯するのが何よりの楽しみ。最近は奇岩と巨石にどハマり中!多趣味であるが故の金欠が最大の悩み。