ここ近年、地球温暖化の進行に伴い世界中で気候変動が起こっており、日本でも毎年のように豪雨災害が起こっています。滝のように降る記録的な大雨により、洪水や土砂災害などの被害が各地で見受けられますが、あなたは災害への備えとして“レインウェア”を用意していますか?
台風や豪雨などの局地的に非常に激しい雨風のときには、傘があっても役に立たないことがほとんど。そのような状況下でビニール製レインウェアを着用しても、雨からの濡れは防ぐことができても、汗で蒸れて服がびっしょりと濡れてしまうことがあるのです。
そこでオススメしたいのが、耐水圧と透湿性に優れた登山用のレインウェア。今回は防災時に役立つレインウェアについて解説します。
災害時における低体温症から身を守る方法
衣服が濡れてしまったら、タオルで拭いて、乾かしたり、着替えたりすればいいと思いがちですが、災害時においては長時間そのままで過ごさなければならない恐れがあります。仮に気温の低い時期であれば、濡れた衣服が体温をどんどん奪っていき、低体温症で命の危険にさらされることもあるほど危険な状態になってしまうのです。
体の深部体温が35度以下になってしまうと、筋肉は硬直し、脈拍や呼吸の減少、血圧の低下などにより脳に酸素が行き渡らなくなるのです。自覚がないまま進行することもあるため、気温の低い環境では注意が必要となりますので、災害時には”蒸れずに染みてこない”レインウェアが必要なのです。
もちろん、台風や豪雨による避難だけでなく、大地震で避難をする際も晴れているとは限りませんし、避難所での防風・防寒にも役立つ万能アイテムなのです。
登山ブランドとして有名な日本を代表するモンベルや、タウンユースとしても人気なアウトドアブランドのノースフェイスなど、高機能かつオシャレなアイテムが数多くあるので、自分の分だけでなく、家族全員分揃えてはいかがでしょうか。
性能がよいレインウェアだとお値段もそれなりですが、雨風の強い日や雪の日、キャンプや屋外での活動など、普段の生活で使うことによりペイできますし、いざという時も慌てずに着用できるもの。防災向けのレインウェアをお探しなら、ぜひこの記事を参考して購入を検討してみてください。
防災向けのレインウェア選びの3つのポイント
災害時に役立つレインウェアを選ぶ際には3つのポイントがあります。
ポイント1:上下セパレートタイプを選ぶ
レインウェアの種類には頭を通してかぶるポンチョタイプやコートタイプ、上下セパレートタイプがありますが、災害時に備えておきたいのは上下セパレートタイプ。
ポンチョタイプやコートタイプだと、激しい雨の中では足元が濡れてしまいますし、台風などの強風の時にはめくれ上がったりしてしまい、雨風のガードでは充分ではありません。一方、上下セパレートタイプであれば、足元の濡れは最小限に抑え、ジャケットがめくれ上がる心配もありませんし、何と言っても動きやすいのです。体のサイズに合ったものを用意しましょう。
なお、ポンチョタイプは避難行動時の雨よけとしては不十分ですが、急な雨を凌ぐときにはさっと羽織れ、大きなパックを背負ったまま着用できます。また、日差し・雨を防ぐための広い布(タープ)として使用したり、避難時のトイレや着替えなどの目隠しとしても使用したりできるので、防災グッズとしてリュックに忍ばせておくと便利かもしれません。
ポイント2:防水性・蒸れにくさなどの機能で選ぶ
レインウェアといえば、ナイロンやポリエステルなどの製品であれば安価に手に入りますが、これまでお伝えしたように防災向けのレインウェアは何でも良いわけではなく、蒸れずに染みてこない本格的なレインウェアを備えましょう。
その基準となるのが、耐水圧と透湿性です。
耐水圧は、どのくらいの水圧に耐えられる防水性かを示す数値であり、数値が大きいほど高い防水性となります。レインウェアを選ぶ目安は下記の通りです。
- 小雨:300mm
- やや強い雨:2,000mm
- 大雨:10,000mm
- 嵐:20,000mm
一般的なナイロン傘の耐水圧は250mm程度。
スキー・登山用のウェアでは、激しい雨や雪にも耐えられるように耐水圧30,000mmや50,000mmといった商品もありますが、災害用としても同程度の耐水圧、少なくとも20,000mm以上の耐水圧があるレインウェアがオススメです。
なぜなら、レインウェアを着用した状態で濡れた場所に座ったり膝をついたりすると、自分の体重の圧が接地面に加わるため、部分的に水濡れが生じやすくなるのです。そのため、「嵐:20,000mm」より高い耐水圧が求められるのです。
また、透湿性とは生地の内側から外側へ水分を逃がす性質を指し、ウェアを着用したときの「ムレにくさ」の基準となる数値です。ビニールなどの透湿性がないレインウェアを着用すると、雨は防げたのにレインウェアの中は汗でびっしょり…なんてことになりますが、透湿性が高い生地で作られたレインウェアは、汗をかいても蒸れにくく、快適に着用できるのです。
生地1㎡あたり24時間で何gの水分を外に出すかを数値「透湿度 (g/m2/24hrs)」で表し、「透湿度 5,000g/m2/24hrs」ならば、24時間で5L(1時間当たり=約200g)の水分を放出できるということになります。
なお、人間の体は安静にしていても常に発汗しており、デスクワークの人でも1日あたりの発汗量は約1,200g、激しい運動をしているシーンでは約24,000gといわれておりますので、災害用としては透湿度20,000g/m²以上あると安心です。
ポイント3:素材で選ぶ
このように災害用としてのレインウェアには耐水圧と透湿性が求められますが、それらを両立した高機能素材の「ゴアテックス(R)」をオススメします。
登山やアウトドアが好きな方ならご存じかと思いますが、ゴアテックス(R)とは異なる機能を持つ素材を層にした高い耐水圧と透湿性を発揮する防水透湿性素材。小さな網目状の構造を持つ耐水性フィルムは液体を通さず、気体となった水蒸気だけが通過できるようになっており、一般的な雨量であれば内部がびしょ濡れになる心配がありません。また、風を防ぐこともできるため、寒い環境でも体温が下がりにくくなります。
なお、ゴアテックス(R)にもいくつかの種類があります。
- ゴアテックス:防水性・透湿性の基本性能を十分に兼ね備えたタイプ
- ゴアテックスプロ:防水性・透湿性が高スペックで耐久性のあるタイプ
- ゴアテックスアクティブ:透湿重視で軽量タイプ
- ゴアテックス-インフィニウム:防風、保温、透湿性に優れたタイプ
ゴアテックスアクティブとゴアテックス-インフィニウムは防水性よりも透湿性に優れたタイプですが、モンベルのゴアテックス-インフィニウムなら防水仕様にした商品がありますので、ゴアテックス(R)製品を選ぶ際には必ず耐水圧と透湿性をチェックしてくださいね。
災害時にオススメのレインウェア
ここからは災害時はもちろん、普段から使用できるおすすめのゴアテックス(R)製品のレインウェアをご紹介します。ゴアテックスを使用した登山ブランドのレインウェアなら間違いありません!おすすめの登山ブランドとおすすめモデルを紹介します。
おすすめの登山ブランド
モンベル(mont-bell)
国内最大手のアウトドアブランド。登山やキャンプ用品をはじめとし様々なアウトドア用品を販売しています。ウェアは日本人の体型を考えて作られており、雨が多い日本の気候に適したモデルが多いのもメリットです。また、海外メーカーに比べてリーズナブルな製品も多いものの耐久性に優れているの、コストパフォーマンスが高いのが魅力的。
パタゴニア(patagonia)
登山用品をはじめアウトドアウェアに特化したアメリカのアウトドアブランド。環境への影響を抑えた製品開発などに取り組み、ペットボトルや着古した衣類を再生して衣類を製造しています。パタゴニアにレインウェアはゴアテックスを採用したモデルとパタゴニアの独自開発素材のモデルが両立しており、好みや用途に応じて選びやすいです。
マムート(MAMMUT)
マンモスマークがシンボルのマムートは、スイスの登山用品メーカーです。登山用レインウェアは防水性・透湿性に優れ、ヨーロッパらしい洗練されたデザインが魅力です。機能性とデザイン性を両立したモデルをお探しの方にオススメです。
ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)
アメリカで創業した世界的アウトドアメーカー。「北壁(ザ・ノース・フェイス)」の社名の通り、厳しい環境耐える登山用品を開発しています。登山ウェアは高い機能性はもとよりデザイン性にも優れているので、タウンユースにも着用しやすいアイテムです。
おすすめモデル
【モンベル】レインダンサー ジャケット / パンツ
耐水圧50,000mm以上、透湿性25,000g/m²・24hrs(JIS L-1099B-1法)
ゴアテックスを採用していながら、比較的安価な本格レインウェア。コストパフォーマンスに優れたモンベルのスタンダードモデルとなり、男性用女性用があります。
【マムート】CLIMATE Rain -Suit AF Men
耐水圧: 28000 mm
様々な天候に対応できるレインスーツ。左袖のロゴマークが特徴的。機能性とデザイン性を求める方におすすめのモデルです。軽量で圧縮性の高いゴアテックス(R) 2.5レイヤー素材を採用しており、重量は540gと軽量。
【パタゴニア】カルサイト・ジャケット
夏の雷雨にも真冬のような状況にも対応できる、透湿性が高くて蒸れにくいゴアテックス製品。脇下に体温を逃がしてくれるジッパーや胸ポケットやサイドポケットも付いていているので機能性抜群です。
【ザ・ノース・フェイス】オールマウンテンジャケット
すべての季節で使えることを指しているオールマウンテンジャケット。耐水圧・透湿性が優れているため、濡れにくく蒸れにくいウェアです。こちらも脇下に体温を逃がしてくれるジッパーがあるので通気調節がしやすいアイテムです。
【モンベル】バーサライト ジャケット Men’s
耐水圧30,000mm以上、透湿性43,000g/m²・24hrs(JIS L-1099B-1法)
極薄シェル素材を使用した軽量コンパクト性を実現したモデルです。ほとんど蒸れないので夏などの暑い季節には適していますが、年間を通して使うなら耐久性が高く生地がしっかりした標準のゴアテックスを選ぶと良いでしょう。
いかがでしたか。
今回は災害時の避難や避難所での着用にオススメしたいレインウェアをご紹介しました。
登山ブランドのレインウェアはリーズナブルな商品でないので、家族分を揃えるのは難しいかもしれませんが、ゴアテックスを使用した登山ブランドのレインウェアなら間違いありません!
とはいえ、購入に悩んでしまうならば、ワークマンやミズノなどには比較的リーズナブルな商品が手に入ります。毎年各地で豪雨災害が発生しておりますので、ぜひこの機会に家族全員分のレインウェアを調達してみてはいかがでしょうか。