オフセット印刷の起源
私たちの暮らしの中には多くの印刷物がありますが、みなさんは印刷の種類やそれ応じた使い分けについて、どれぐらいの知識をお持ちでしょうか?
印刷といってもインクジェットプリンターやレーザープリンターくらいしか思い浮かばず、種類と聞かれてもピンとくる人は少ないかもしれませんが、今回は印刷の歴史シリーズ第3弾として、活版印刷の次に発展したオフセット印刷についてお伝えします。
ハンコの転写を応用した木版印刷から始まった印刷技術は、それを工夫して文字の型を並べた版を使った活版印刷が主流となり、その後に発展したのがオフセット印刷と言われています。新聞やチラシ、ラベルや包装紙などなど、多くの企業の制作物にはオフセット印刷が採用されているほど、現代の印刷方法の主流です。
そもそも、オフセット印刷とは、
水と油の反発する性質を利用した平たい版を使った印刷方式「平版印刷」のひとつ。
平たいクレヨンやローソクと水彩絵の具で絵を描く「はじき絵」をイメージすると分かりやすいかと思いますが、水と油の反発する原理は、1796年にドイツ出身の俳優・劇作家セネフェルダーによって発見されました。
これは「石版印刷」と呼ばれる技術となりますが、新しく書いた戯曲の原版を作るために、石灰岩の上に油性クレヨンでメモを書いたところ、いざ消そうとしたらクレヨン汚れが残ってしまったのです。しかし、その部分には油がよく乗ることに気が付き、クレヨン跡の上にインクを乗せ、紙を押し付けたところ紙にインクの形を転写することに成功したという、まさに偶然から生まれた発明なのです。
その後、時を経て、石版ではなく紙を使った「オフセット印刷」の技術が開発されました。
おもしろいことにこれも偶然の産物で、印刷工場で誤って紙を補給しないまま空刷りし、次に紙を通したら両面がキレイに印刷されたことがきっかけといわれています。印刷工場経営者であるアメリカ人のアイラ・ルーベルは、この空刷りをヒントに転写用ローラー(ブラケット)を用いて印刷するオフセット印刷を完成させたのです。
日本では1900年頃に外国製の印刷機が輸入されるようになり、その後、日本国内で印刷機が製造され始め普及していきました。
オフセット印刷の意味と仕組み
オフセット印刷という名の由来はその仕組みにあります。
オフセット印刷は、版胴と呼ばれる版を巻き付けるローラーにインクをつけ、ブランケット胴とよばれる転写用ローラーにインクを移し、それを用紙に転写するのですが、
インクを移す工程を「オフ」、印刷面に転写する工程を「セット」
と表すこと名づけられたとされています。
オフセット印刷の利点は、版が紙に直接触れないことから版胴の磨耗が少なく済み、大量の印刷も短時間で仕上げることができるのです。また、色の表現はシアン・マゼンタ・イエロー・ブラックの4色の版で1色ずつ重ね合わせることによりフルカラーの印刷を実現しています。
また、オフセット印刷機には、
枚葉印刷機:裁断済みの紙を1枚ずつ印刷する
輪転印刷機:ロール状の用紙を一気に印刷する
枚葉印刷機は用紙のサイズが自由に選べ、小ロットの印刷も可能なため、様々な印刷物の生産に適しています。また、輪転印刷機は印刷から乾燥、折り加工や裁断まで機械上で行えるため、チラシや雑誌などの大ロット生産に適しています。
どちらにしても、オフセット印刷機には1色ずつインクを乗せる機器が並んでいるため、とても大きな機械です。インクと版がセットになっている機器の中を「紙が走り抜ける」そのようなイメージでしょう。
オフセット印刷のメリット・デメリット
オフセット印刷のメリット・デメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。
オフセット印刷のメリット
- 版を使用するため同じ品質の印刷物を生産できる
- 大量印刷の場合はコストダウンになる
- 色の再現性やインクの固着性が高ため、仕上がりが良い
- 印刷スピードが速い
一度の製版で何度でも繰り返し使用できるため、印刷すればするほどコストの削減につながります。細い線、小さい点、グラデーションなどをキレイに表現できるので、写真やイラストなども鮮明に印刷することができます。
オフセット印刷のデメリット
- 製版のコストがかかるため、小ロットの場合は割高になる
- 製版に時間がかかるため、納期まで時間がかかる
- 内容が少しずつ異なる印刷物には向かない
製版にはコストも時間も要してしまいます。印刷物が少ない場合や内容が少しずつ異なる印刷物の場合は違う印刷方法を試した方がよいでしょう。
なお、オフセット印刷の用途としては、様々な印刷物に活用されています。
- 名刺やショップカード
- 封筒や挨拶状
- はがきやポストカード
- ポスターやフライヤー
- パンフレット・カタログ
など
私たちの生活の身近なアイテムはほぼオフセット印刷で制作されていると言っても過言ではありません。
オフセット印刷は偶然から生まれた発明でしたが、それがあったからこそ現代の優れた印刷技術があるのです。時を超えて進化を続ける印刷技術、この先どのように進んでいくことでしょうか。
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