綺麗なグラデをプリントするなら「HSV(HSB)」要素を押さえておこう!
それだけでオシャレに見えてしまう、グラデーションデザインのTシャツ。
生地の色がグラデーションになっていたり、プリントの色がグラデーションになっていたりと、様々なデザインはありますが、グラデTシャツを着ているだけで、あたかも完璧なトータルコーディネートをしているかのように、オシャレな印象に仕上がる便利アイテム。
そんなグラデTシャツをオリジナルプリントで作ってみませんか?
いやいや、グラデーションのデザインTシャツを自分で作るなんて難しいでしょ?!
実は、HSV(HSB)という色の表現方法を理解してしまえば、意外にも簡単にグラデーションを作れちゃうんです。
カラーコードと言えば、シアン・マゼンタ・イエロー・ブラックの4色の組み合わせからなるCMYKや、レッド・グリーン・ブルーの3色の組み合わせからなるRGBをご存じの方も多いのですが、HSV(HSB)であれば色を滑らかに変化させられるため、グラデーションのデザインを作るのに最適なのです。
まず、HSV(HSB)とは
色相(Hue)・彩度(Saturation)・明度(Value・Brightness)
の3つの基準から、色を分類する色空間のこと。
色相や彩度、明度…???
デザイナーやカラーコーディネーターなど、仕事として色彩を意識している人でない限り、ほとんどの人には聞きなじみのない言葉かもしれません。
何だか難しく捉えちゃいそうですが、実はこのHSV(HSB)は少し理解するだけでも、格段にデザインのイメージがしやすくなるので、下記を参考にして、ぜひHSV(HSB)を覚えましょう。
色相(Hue)
色合いのこと。
赤、オレンジ、黄、緑、青、紫など。
彩度(Saturation)
色の鮮やかさのこと。
高い・低いで表される。
真っ赤や真っ青と呼ばれる彩度が高過ぎる色で配色を組むと、「目が痛い」とか「チカチカする」デザインになってしまう。
明度(Value・Brightness)
色の明るさのこと。
高い・低いで表され、最も明度が高い色が白、低いのが黒である。
このHSVとは、色を「鮮やかさ」「明るさ」といった直感的にわかりやすい方法で表現するため、
この色を明るくしたい・暗くしたい
色を薄くしたい・濃くしたい
といった感覚的な調整が簡単にできるため、グラデーションのデザインを作るのに便利なのです。
プリントの色は赤にするのか、青にするのか・・・
色の種類は無限大なので、色を決めることは簡単ではありません。
ひとつの色でも鮮やかさや明暗が違えば全く違った印象に仕上がるものなので、まずは一色選んで明度を変えてみるなど、HSVで様々なグラデーションを作ってみてください。
多色使いは難易度が高まりますので、グラデ初心者は単色のグラデーションをお試しくださいね。
なお、下記のような、直感的に色を選択できる無料ツールも便利なので、参考するのもいいでしょう。
≪HSL/HSV カラーピッカー≫
https://www.oh-benri-tools.com/tools/color/hsl-hsv-color-picker
色鮮やかなグラデーションを作るコツ
グラデーションをデザインする上で、気をつけなればならない点があります。それは「色の並び順」。
同じ色相であれば、
薄い青 → 青 → 濃い青
といったような順で並べれば、自然なグラデーションに仕上がりますが、異なった色相の場合は並ぶ順番を間違えてしまえば、くすんだ色合いが増えたりして自然なグラデーションに仕上がらないのです。
ですので、違う色相を組み合わせるなら
赤 → 橙 → 黄 → 緑 → 青 → 藍 → 紫
といったレインボーカラーのような順で並べれば、違和感なく色が変化していくのです。
どんな色にしようかと悩んでしまった時も、HSV(HSB)を用いて考えると簡単。HSV(HSB)は、色相をイメージしながら色を決めることができるので、色同士の効果や関係を考えながら色を選ぶことができます。
では実際に、HSV(HSB)をどのように変化させれば、きれいなグラデーションを作ることができるのでしょうか?下記の図を参考にして、それぞれの要素ごとに例を見ていきましょう。
図1
色相(H)が変化するグラデーション
例)赤→黄色、水色→青、黄色→緑、青→紫→赤
色相を変化させるグラデーションを作る場合、図1(Color Wheel)の並びに沿って考えることがポイントです。例えば、赤→青→黄のように並べると自然なグラデーションにはなりません。
青や紫、黄色、緑など様々な色相がきれいなグラデーションになっています。
色相環に忠実なグラデーションなので、多くの色を使っていながらも、すっきりとしたデザインになっていますね。
彩度(S)が変化するグラデーション
例)赤→白、青→白
図1のSaturationのように、彩度を低くすると白になります。
色のばらつきがなく、統一された色味になるのでシンプルなデザインにおすすめです。
赤の彩度が段々と変化していくデザイン。
帯状のプリントで、はっきりとしたグラデーションが印象的ですね。
明度(V)が変化するグラデーション
例)青→ネイビー、焦げ茶→赤、黒→白
図1のValueのように、明度を低くするにつれて暗い色になり、一番低くすると黒になります。
変化の中の近い範囲を抽出してグラデーションにするのがおすすめ。
デザインに深みが出て、インパクトのある色合いが作れます。
鮮やかながグリーンが段々深いグリーンになっていくグラデーション。
上下で違う色ですが、明度を変えているだけなので全体的にまとまり感がありますね。
このようにグラデーションを美しく表現するなら、
HSVのどれか一つの要素を変化させる
ようにすると良いでしょう。
モニター上ではもっと複雑なグラデーションを作れますが、印刷すると思うような結果にならないケースが多々あります。なので、上記のHSVそれぞれのグラデーションの特徴を参考に、一つの要素を選んでデザインするのがオススメです。
グラデーションデザインに適したプリント方法の選び方の基本
ここまではグラデーションデザインにおける、色のHSV(HSB)要素と色の使い方について紹介してきましたが、ここではプリント方法についてお伝えします。
主なプリント方法は次の2種類です。
どちらもグラデーションを綺麗に表現できますが、シルクスクリーンプリントでグラデーションを表現する場合には通常よりコストがかかってしまうのです。
というのも、シルクスクリーンプリントでインクの濃淡を表現するには、点の大きさに変化つける網点(あみてん)またはハーフトーンと呼ばれる技法が用いられるため、濃淡のないデザインに比べて製版代が高くなってしまうのです。また、版は1色ごと作成するものなので、単色の濃淡によるグラデーションであれば1版で済みますが、多色使いのグラデーションだと数枚の版を用いることになるのです。
たとえば、黒~白のグラデーションは1版(黒)で対応することができますが、赤~黄のグラデーションは最低でも2版(赤、黄)、より美しく表現するためには3版(赤、オレンジ、黄)が必要となります。
その点、インクジェットプリントは製版不要なので、色数やコストを気にせずグラデーションをデザインすることができます。フルカラーで印刷できるため、色数に関係なく細やかな表現ができるでしょう。
また、トータルコストはプリント方法だけでなく、作成する枚数にも関係するので、基本的には次のような基準でプリント方法を選ぶと良いでしょう。
- 少~中ロットならインクジェットプリント
- 大ロットならシルクスクリーンプリント
個人的に作る場合や少人数で作る場合はインクジェットプリントがオススメですし、大量生産する場合には、製版代がかかってもシルクスクリーンプリントの方がお得に作れます。
ユニフォームやスタッフTシャツとして利用する場合など、リピート注文する予定のあるものであれば、初期費用はかかってしまってもシルクスクリーンプリントがいいのかもしれませんね。
いかがだったでしょうか?
冒頭で述べた通り、色の組み合わせは無限大です。ぜひ、色選びの基本となるHSV(HSB)を参考に、自分だけのこだわりグラデーションを作ってみてください。
目で見て、自分の感覚で作ることができるので、技術が無い人も気軽にチャレンジすることができるグラデーション。もちろん、デザインに関する相談もお待ちしておりますのでお気軽にお問い合わせください。