顔料と染料の基本的な違い
もうすぐ、うだるような暑い季節が到来しますが、みなさんいかがお過ごしでしょうか。熱い季節の必需品といえばTシャツ。白や黒といった定番カラーももちろん、色とりどりのカラフルなものもあり、コーディネートの幅が広がる優れもの。パステルカラーは優しく柔らかい印象を与えてくれますし、グラデーションやタイダイ染めのTシャツは個性的なスタイルを作り出してくれます。
そんな色とりどりのTシャツは、どのように着色されているか考えたことはありますか?もちろんTシャツ自体は糸や生地を染めて着色しているものですが、プリントTシャツであればその部分はどのようにして着色しているのでしょうか。
そこで今回は、Tシャツをはじめ、さまざまな人工物はどのように色が付けられているのか考えていきたいと思います。
さて、私たち人間は、自然界にある動植物の色のほか、人工的に着色されたものの中で暮らしています。紙や布、プラスチック製品や革製品、化粧品や食品、さらには建物などの人工物はさまざまなカラーに着色されていますが、その着色に用いられているのは色材とよばれる色をつける材料の「顔料」と「染料」です。
この顔料と染料は家庭用プリンターなどでも使用されているため、聞き覚えのある人も多いかと思いますが、その違いをしっかりと理解している人も少なくありませんので、簡単にその違いを紹介します。
顔料と染料はどちらも色を与える材料ですが、その特性には大きな違いがあります。
顔料と染料の特性
- 顔料
- 水や溶剤に溶けないため、表面に付着して発色する
- 染料
- 水や溶剤に溶けるため、内部に浸透して発色する
これはそれぞれの粒子の大きさが関係しており、粒子が大きい食材は表面を覆い、粒子が細かい染色は浸透していくのです。
このように全くといっていいほど着色のメカニズムが異なる2つの色材ですが、顔料は主に塗料やインク、プラスチックや化粧品など、染料は主に紙や繊維、皮革や木材、食品などの着色に用いられています。
なお、発色や耐久性、質感や色褪せなど、その仕上がりは大きく変わってくるものなので、用途に合わせて選ぶことが基本となります。
顔料とは?特徴とその歴史
顔料は、塗料やインクなどを着色するために用いられる、水や溶剤に溶けない粉末の物質です。使用する際には、バインダーと呼ばれる繊維に固着させるための接着剤のようなものに混ぜることで他の物質に着色することができます。主な特徴は以下の通りです。
特徴1 耐久性の高さ
素材の表面に物理的に付着するため、水や光、化学物質に対して優れた耐性を持っているため、経年変化がしにくいです。しかし、顔料はバインダーなどの接着剤を用いて色の粒子をくっつけているため、何らかの作用によってバキバキ割れたり、ペロペロと剥がれ落ちたりしまう場合もあります。
特徴2 にじみにくくクッキリと鮮明
顔料は不溶性の物質なため、溶媒に溶け切っておらず粒子として残り、にじみにくく、クッキリと鮮明に着色できます。
特徴3 質感、風合い、手触り
顔料の粒子のサイズや形状により、さまざまなテクスチャーが作り出されます。
しっかりとした層を形成する場合は、厚く、固くなり、手触りがややザラザラすることもあり、質感のある仕上がりが得られるものの、素材そのものの自然な風合いはありません。
このように顔料による着色はあくまでも表面に付着させるものであることから、冒頭でお伝えしたプリントTシャツのプリント部分は、顔料インクを用いて着色していることが一般的です。なお、プリント方法としては、シルクスクリーンプリントやインクジェットプリント、ホワイトインクジェットなどさまざまな方法が存在しますが、当サイトTplantでは以下のような仕上がりになります。
シルクスクリーンプリント
インクジェットプリント
シルクスクリーンプリントはクッキリと鮮明に仕上がるため、ロゴやキャラクターなどの単色や数色のデザインに適しています。一方、インクジェットプリントは色数を気にせずにフルカラーで表現できるため、グラデーションもきれいに仕上がります。
ちなみに顔料の歴史はとても長く、紀元前から2万年以上も昔から使われていたとされています。以下の画像は、サハラ砂漠にある山脈、タッシリ・ナジェールの洞窟壁画ですが、これらの壁画の製作年代は明確にはなっていないものの、少なくとも5000年以上も昔に描かれたものであることが最新の調査によって明らかになっています。
これらの壁画に使われた色材は顔料の原型であり、土や木、貝殻などを燃やして灰にしたものを動物の脂や樹液など混ぜ合わせたものです。そして、それらを顔や体に塗っていたことから、顔料と呼ばれるようになったという説があります。
染料とは?特徴とその歴史
染料は、紙や繊維などの着色ために用いられる、水や溶剤に溶ける粉末の物質です。素材の分子との化学的結合により着色するので、表面だけでなく、内部まで色が浸透します。また、染料は水溶性ではあるものの、一度結合すると水に溶けるという性質を失うため、洗っても色落ちしにくい状態になります。主な特徴は以下の通りです。
特徴1 柔軟性と滑らかさ
染料は素材に浸透して着色するため、素材の表面は平滑です。また、柔らかさや滑らかさを損なうことが少ないため、素材の自然な風合いを保ちます。
特徴2 発色が良く、色鮮やか
染料は細かい粒子が素材に浸透して着色するため、発色が良く、色鮮やかに仕上がります。ただし、顔料に比べて乾くまで時間がかかるので、乾く前に重ねてしまったりすることで、色むらができてしまったり、くっついてしまう場合もあります。
特徴3 顔料よりも耐久性が劣る
染料は、光や洗濯による色褪せが発生しやすいため、顔料よりも耐久性が劣ることがあります。
なお、人間が色を染めるという技術を身に着けたのは、色を身体に塗りつけるようになった時代のもっと後のことです。人類最古の染料は藍であり、現存する世界最古の藍染の布は、約4000年以前のエジプトのミイラに使われていたものです。日本へは奈良時代に中国から朝鮮を経て伝来し、平安時代までは上流階級が身に着ける高貴な色として扱われていたそうです。
また、藍以外にもさまざまな染料が存在しますが、最近では地球環境への影響を最小限に抑えるため、天然染料を用いたエコフレンドリーなファッションや製品が注目されています。ちなみに、特別な染料がなくても玉ねぎの皮や紫キャベツなどを使って染める「草木染め」は意外と簡単にできますので、生地を紐で縛ってタイダイ染めにチャレンジしてはいかがでしょうか。
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